僕は重度の読書中毒である。
その本が面白かろうがつまらなかろうが、常に何か読んでいないと落ち着かない。
20年ほど前にリンクポケットという読書器を知ってから、読書中毒に陥った。
サピエ図書というオンラインでの図書館があり、リンクポケットというガラ系の携帯
電話ぐらいの大きさの装置でダウンロードして、読書サービスされたものを聴く。
これは視覚障碍者専用のものなので、一般の方々は手に入れることはできない。
ここは大概の本は見つけることができる巨大なオンライン図書館である。
今は林文子の「放浪記」というのを読んでいる。
子供のころに親子三人で郷里の熊本を追い出されてから、女給や下働きをしながらほ
とんど乞食同然の生活で、その日の食べる物もないほどな貧困の日々を過ごして生き
ることが書いてある。
当時の日記を軸にして書かれた話なので、毎日お腹が空いた、もう死にたい、という
ような文句ばかりが並んでいる。
今読んでいる箇所では関東大震災のころ、彼女は二十代半ばである。
そんな社会の底辺とも言える毎日の彼女が、いつ、どのようにして大作家になって行
くのか、とても不思議である。
この「放浪記」がベストセラーとなって人気作家に躍り出るのだが、その後も47歳
で心不全で急死するまで彼女の書いた本は売れに売れる。
他界した後の財産には、五百坪の家が二つもあったとか。
小学校も出ておらず、ぼろぼろの服で家もなくて財布の中はいつも五十銭足らずであ
った彼女。
当時まだまだ重要とされた家柄、財産というものなしに大作家となり、後世に名を遺
した一生は実に不可思議で心惹かれるものである。
そんな子供時代、少女時代の苦労を經驗した性か、気が荒く破天荒で、文壇からはつ
まはじきにされていたようである。
傍にいないから言えることかもしれないが、ますます興味深い人である。
彼女の作品はいくつか読んでみようと思う。
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