2019、12、30

それでも怪我から一週間後にはゆっくりゆっくり歩きながら阿波座の教室まで出かけ

てレッスンを行い、合唱団の指導も行っていた。

指揮をするのは、これは激痛である。

普通に指揮が振れるようになるまでには2か月はかかっただろうか。

今回もまた背骨や骨盤を骨折したり、頭を打ったりしなかったことをいるかいないか

分からない神に感謝しながら痛みに耐えた。

僕の卒業後に描いていた目標は「四つどもえの生活」というものである。

治療院開業・どこかの治療院への勤め・師匠のところでの修行、それから従来までの

音楽の仕事である。

この四つを並行して熟して行くのである。

肋骨に響く鈍痛を抱えて、まずは開業手続きの手筈、雇ってくれる治療院探し、それ

と時間を見つけて修行に出かけることを始めた。

そうこうして数か月が経つと10月になり、以前から皆で計画し推進してきたNSK

合唱コンビナーレの演奏会本番が近づいて来た。

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2019、11、13

線路の上で僕は呻いていた。

息ができない。

それでも電車が来る前に何とかしてホームにあがらなければと思考は動いている。

立ち上がるとホームは目の高さ。

渾身の力を込めて片足をホームに上げると、若い男性が腰のベルトを持って引き上げ

てくれる。

もう一人の男性が軽やかに線路に飛び降りて白杖を拾ってくれている。

僕は汚いホームの上に四つん這いになって、荒く息をつき呻く。

一人の子供が横に来て、覗き込みながら僕の荒い呼吸の真似をしている。

どうしてこんなに苦しいんだろう、と思考のどこかで考える。

おそらく肋骨が何本か折れているのだろうが、15年前に線路に落ちて肋骨を二本

折った時にはこんな苦しさはなかった。

ことによったら折れた肋骨が肺にでも刺さったか。

そうこうしていると駅員が数人やって来て、僕を抱えてベンチに座らせる。

あれこれ質問してくるが、意識が朦朧として答えられない。

やがて救急隊員が現れたのでタンカーで運んでくれるのか、と思いきや徒歩で階段を

上がらせされ、救急車まで。

こいつら鬼か、と思ったのを覚えている。

救急病院に着いたが、もちろん肋骨の骨折はどうしようもない。

レントゲンを撮って、サポーターベルトとロキソニンを渡されて家に帰った。

そこから約四週間、微動だに出来ない痛みとの闘いである。

ベッドから起き上がり、トイレに行くにも呻きながら汗だくになって15分掛かって

便器まで。

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2019、9、12

卒業式の後、夕方からは謝恩会が開催されることになっていた。

一度家に帰り、少し仮眠を取る。

なぜなら今日は徹夜になるからだ。

謝恩会の後、カラオケボックスに入って一晩中というのが毎年の恒例らしい。

恐ろしいことだ。

そんなこと、学生時代以来やったことがない。

夕方に目を覚まし、着替えて難波の謝恩会会場へ。

ほとんどの先生は出席下さっている。

何人かの先生には個人的にもお礼を言いたかったのだが、レクレーションや何やらが

満載で話す機会もない。

そうこうしているうちに会は終了。

先生方を見送って、会場を出ると我々はぞろぞろとカラオケの店に。

カラオケボックスと言っても30~40人ほど入れる大広間だった。

見ると数人の先生方はここまでもお付き合いくださっている。

その時点で21時ぐらい。

なんとそこから朝の5時ごろまで熱唱が続くのである。

歌う曲もない僕は何とか一曲だけマイクを握ったきり、後はずっと頭の痛くなるような

大音響の中で漫然と時間を過ごす。

他の者もそりゃ疲れていると思うが、三年間の打ち上げとなるとそれぐらいは必要な

のだろう。

6時を過ぎたころにようやく外に出ると、空は白々明け始めている。

僕はその日、朝の10時から合唱団の指導があるので、皆に別れを告げて喫茶店で時間

を潰して練習会場へ。

一睡もしていないわりには元気である。

12時に練習を終え、地下鉄を何度か乗り換えて自分の寝床に向かって帰る。

そのころにはかなり頭がぼーっとして来た。

ある地下鉄の駅で電車を乗り換えるべく構内を歩いていると、一人の男性が「一緒に

行きましょうか」と声を掛けて下さり、腕を借りる。

ホームに降りる階段を共に下ったところで、僕とは逆の方向の男性の乗る電車が到着

したので、彼は挨拶してその電車に乗り込む。

僕は一人でホームの上をぶらぶら進む。

眠気で頭がぼーっとして思考が働かない。

ふと気が付くと地面が消え、体がふわりと奈落に落ちる。

その刹那「どうして僕は線路に落ちるのだろう」と不思議に思ったことを覚えている。



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